[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」

はんぶんカメラ
名機か?キワモノか?ハーフサイズ一眼レフ
 オリンパス ペンF/FT (OLYMPUS PEN F/PEN FT)
 PEN Fシリーズについて

 1963-66年(PEN F)、1966-70年(PEN F)発売。オリンパスの天才設計者の手になる、ハーフ判(18×24mm)用一眼レフ。
 ハーフサイズ専用設計の一眼レフとしては、京セラ「サムライ」と、これしか聞いたことがない。

 ビューファインダー式の普及機「OLYMPUS PEN」シリーズで成功を収めたオリンパスが、勢いに乗ってフルラインナップで繰り出したシステムカメラで、「PEN」シリーズや、「OM」シリーズ、「XA」シリーズの主設計者として有名な米谷 美久(まいたに よしひさ)氏が企画・設計のまとめを担当している。

 カメラというものは、チームで設計するもので、日本だけではなく例えばドイツのカメラでも、設計者・開発主査の名前が前面に出てくることはほとんどない。初期型ライカ(オスカー・バルナック)、コンタックスT(ハインツ・キュッペンベンダー)、ローライ35(ハインツ・ヴァースケ)ぐらいだろうか。

 まつもとの好きな旧フォクトレンダーのカメラは、とびきり個性的なカメラが多いのだが、なぜか技師の名前は詳らかではない。ちなみに米谷さんは、オリンパスファンなら知らぬ者のないカリスマとなっている。

 当然これらのシリーズは、プロジェクトチームで開発されたものだろうが、個性的、かつ強力なリーダーのプロジェクトの結果生まれたカメラは、その個性が反映されて「オモシロイ」カメラになる。

 写真を撮るのが好きで、人まねが嫌い。そんな設計者が、社内の横槍を受けずに自分で使いたいカメラを設計したら、オモシロイカメラにならないわけがない。

 それまでも、その後も、これに似たカメラは登場しなかった。孤高のカメラではある。

 つくづくモノ造りに携わる人間というのはうらやましい。

 附属のシューアダプタ。

 OM-1もそうだが、アクセサリシューは初めからボディに造りつけになっていない。万人が使うわけではないものはオプションにする、というのが米谷さんのポリシーのようだ。

 それはそれで構わないのだが、取り付け強度に問題があり、実質ファインダー接眼部(プラスティック製)に荷重がかかる。

接眼が割れているF/FTが多いのは、このシューアダプタに原因がある。

 必要機能を元に一から起こし、一眼レフのアイレベルファインダーに定番のペンタゴナルダハのプリズムではなく、双眼鏡などによく使われるポロプリズムを組み込んだファインダー、チタン薄膜のロータリー式フォーカルプレンシャッタなどを限られたスペースに収めた設計は、非常に凝っていて見どころがいっぱいだが、このカメラの価値は、使いやすさ、である。

 設計に凝りまくって作られたカメラというのは、例えばまつもとが愛用しているヴィテッサなどがそうだが、使いやすさという点では今一歩であることが多い。

 それはそれで趣味カメラとしては一向に構わないのではあるが、当然、商業的に成功するのは難しいだろう(ヴィテッサは、そこそこのヒット商品だったが、企業体としてのフォクトレンダーは、その後衰退していった)。

 米谷さんの機械は、凝った、一見斬新な機構ではあるが、あくまで「使いやすさ」という道具の本質を追及するがための設計になっている。

 例えば、小型軽量を追及しても、操作部分のサイズはむしろ大きくするなどの工夫が随所にある。オリンパスOM-1もそうだが、PEN Fシリーズも、写真機材としての使い勝手は非常によい。また、設計もよく練られているので、耐久性のあるカメラである。

 ロータリーシャッタというと、一般に耐久性のあるシャッタではあるが、ペンFのような超高速で急加速/急制動を行うシャッタはほかにはなく、シャッタ膜じたいや、駆動ギアにかかる負荷はかなりのものになる。シャッタ膜の軽量化を強度を保ったまま実現するために、当時の新素材であるチタンにエッチングとシボ押しを施して使っている。

 シャッタ膜面は、チタンの地肌むき出しの乳白色だが、これは、塗装や黒染めを施すことでのわずかな重量増を嫌ったためだ。

  デザインについては、いわずもがな。実に美しい。プレス技術はかなり手を掛けている(相当深く絞っており、また、大荷重のプレスマシンが必要な細段押しも施してある。プレスに使う金型の寿命は短かったのではないだろうか)。

 クロムめっきやエナメル塗装もしっかりしたもので、もちろん保存状態が良いせいもあるが、手元の2台は40年前の写真機とは思えない輝きである。内部の機械や光学系も、材質や設計がきちんとしているので、腕の良い技術者の整備にかかれば、新品のフィーリングに戻る。

 現在もまともに使える趣味カメラである。

・設計/製造にあたっての試行錯誤については、

 「オリンパス・ペン」の挑戦=i米谷美久著、朝日ソノラマ発行)

 に詳しいので、興味のある方は一読をおすすめします。

 フランジバックが短いので、アダプタを介して各社の一眼レフ用レンズを装着できる。

 これは、ニコンFマウント用アダプタ。

 下の画像は、ニッコール35mm F1.4と、105mm F2.5を装着した様子。

 オリンパスOMレンズマウントアダプタを介して、OM用Zuiko55mm F1.2を装着。

 オリンパスは、最近までこのアダプタを供給していた。

 35mm判大口径標準レンズを装着すると、ノクチを載せたライカMのようになる。

 PEN専用レンズは、焦点距離や開放値が異なるとはいえ、実にコンパクト。

 シボ押し合成皮革のケースはしっかりとした作りになっている。

 内張りは鮮やかなパープル。

 ペンFとFTでは、三脚穴の位置が異なるので、相互流用はできない。

 フラップは、スナップボタンで分割できる。

 ハーフ判について

 デジタルカメラ全盛の陰で、アナログカメラ=フィルムカメラは、かつてないほどに影が薄い今日この頃である。

 デジタル嫌いのまつもとでさえ(この前、友人の結婚パーティにデジカメを持参したところ、まつもとを知る友だちに驚かれた...)、最近は、デジタルカメラでの撮影枚数のほうが多い。

 かつて写真の拠りどころであった紙メディアにしても、すでに勢いなどなく、その紙メディアじたいデジタルで製版される時代である。

 そんな時代に、アナログ写真をやる意味というのはあるのか?といえば、もう意味などすでになく、しかし、だからこそ趣味なのだ、と開き直るほかないのかもしれない。

 さて、周知のように、アマチュアの使うパトローネ入りのフィルムは、35oフィルムと称され、35o幅のシネ用フィルムをオスカー・バルナックがライカに詰め込んで以来、紆余曲折がありながらも大いなるスタンダードとして定着してきたサイズである。

 もともとの映画用のコマを二つつないだ、この幾分細長い画面サイズは、24o×36o。感剤の進化でいちおうの高画質印画をつくることができる。ハーフ判の画面サイズは、それをちょうど二つに割った18o×24o、ということは、35o映画のフルサイズでもある。

 ありていに言うと、原版が半分の面積だから、伸ばした印画の画質は、24o×36oから伸ばした画質には当然及ばない。どんなに解像力の優れたレンズを使っても、フィルムの粒状性の限界もあり、階調の再現幅も狭く、相対的に粗い画質になる。

 が、それをいえば、35o判がブローニー判に、ブローニーがシノゴに、シノゴがエイトバイテンに敵わないが如く、きりのない話。ハーフ判の特長は、フィルムも現像代も昔と違って安価な現代、そう得意気に語ることでもないが、例えば36枚撮りフィルムを使えば72枚というふうに、多枚数を一気撮りできるところかな。

 0円プリントのラボに何食わぬ顔で同時プリントを依頼し、72枚の束を受け取るのは訳もなく痛快である。

 と、いうのは冗談だが、ハーフサイズでフィルム横給送のカメラの場合、ファインダーを覗けばそこは縦長の窓で、いつもとは違う世界の見えかたが体験できるのは楽しい。

 殊に、単なるビューファインダーの光学系ではなく、レフカメラのファインダースクリーンが縦長で見えるのは、一種の非日常体験に感じられる。それに慣れてしまうまでは...。

 使ってみる

 さて、実際に使ってみて気付くところをいくつか。

 FとFTの違い

 FTは、Fの後継機種で、いくつか改良・変更されている部分があるが、実用上関係するところとしては、TTL露出計とセルフタイマーの追加、フィルム巻き上げを2回から1回に短縮、レフミラーの大型化、シンクロにM接点を追加、スクリーン中央にマイクロプリズムを追加、というところ。

 シャッタリリースのフィールも幾分軽くなり、ミラー(シャッタ?)ショックも少し軽減されているようだ。シャッタ音は、明らかに異なる。

 細かいところでは、三脚穴位置の変更(露出計内蔵に伴い、従来の三脚穴のスペースを電池室にしたため)、フィルム巻きが逆巻きから順巻きに変更、など。フィルムが順巻きになったのに伴い、裏蓋にフィルム押さえのローラが追加されている。

 使い勝手に影響するのは、ファインダー光学系周りと巻き上げ方式だろうか。

 ファインダー

 ペンFで露出計は外付けオプションだったが、FTではTTL露出計を内蔵するようになった。のは、いいのだが、ファインダー光路(プリズム×2、2群3枚のルーペ、ミラーで構成されている)に一枚入っているミラーを半透過ミラーにし、計測用の光(約10%)を取っているため、スクリーン像が暗く、黄色味を帯びて見える。

 要は、スクリーン画像の明るさが、ペンFTの場合、Fに比べて10%減じられるということで、この10%はかなり大きい。

 例えば、キヤノン旧F-1は、似たような原理でスクリーン上のコンデンサーレンズにハーフミラーを割り込ませて測光素子に測定光を導いているが、ハーフミラーのかかる中央部は、ミラーのかかっていない部分と比べると、かなり暗くなっている。

 ファインダーの見えを重視する向きには、Fのほうがよりクリアなので、おすすめである。全面マットなので、画面もすっきりしている。あるいは、FTでメーターが死んでいる場合に、ミラーをフルミラーに変更してしまうのもいいかもしれない。

 ファインダーの光学系じたいは、実にまとも、というか、0.8倍と倍率も高く、素晴らしい。

 まつもとが、一番好きな一眼レフ、と賛辞を惜しまないトプコンREスーパーは、実はファインダー光学系の設計の詰めが甘かったのか、見えはあまりよくない。ということで、よくないファインダー像を見慣れているせいか、たいへんフォーカシングしやすく感じてしまう。

 もっとも、最新の一眼レフのファインダーに比べれば、相対的に暗い。反射面が多く、光量をロスしているせいもある。スクリーンは、明るさは足りないにしても、ピントの山がつかみやすく、ボケの再現もいい。よく観察すると、輝度差の大きい背景の2線ボケを確認できるほどである。

 FTになって、中心部にマイクロプリズムが追加されたが、明るくないレンズで翳りが出るのを避けるためか頂角がゆるく、100mm F3.5レンズを装着しても一応使えるようだ。逆にいえば、それほど精度は高くない。

 露出計まわり

 ペンFTのTTL露出計は、前述したように、ファインダー光路から光を抜いて測定するもので、ちょうどシャッタボタンの下の部分にメーター本体がある。CdS素子を使ったこのメーターは、オーソドクスな部類だと思うが、二つ問題を抱えている。

 一つは、CdS受光素子の限界で、低照度の測定が苦手なこと。これは時代を考えれば仕方ない点かもしれない。

 二つめは、レンズの情報をメーターが受け取れるような機構になっていないことである。例えば、装着しているレンズの開放F値、設定F値、光学的特性(例えば、周辺光量の過不足、レンズ構成枚数による透過光量の増減など)等の情報は、メーター指針と連結していない。

 従って、ファインダー内の露出計の針が指す「TTLナンバー」を一度読み取り、レンズ絞り調節リング兼用のリングを回してTTLナンバーを合わせるか、あるいはあらかじめ設定したTTLナンバーに指針が合致するようにシャッタダイヤルを調整する必要がある。

 トプコンREスーパーのように、とにかく指針を定点に合致させればよいゼロメソッド式のメーターであればいいのだが、既に販売されているペンF用の規格という足かせがある以上、妥協せざるを得なかった部分だろう。機械的には、レンズじたいに識別ピンを一つ追加すれば解決する。

 ということで、使い勝手がよいとはいえないが、手元にある機体に関していえば、その後発売されたOM-1と同等の精度はある露出計ではある。この露出計のために、ペンFT発売以降の交換レンズには、絞り調節環の、絞り値表示部分の反対側には「TTLナンバー」が刻印され、リングをスライドさせることで二役を果たすようになっている。

 まつもとの場合、露出は単体露出計か、「勘」で決めるので、あまりメーターは使わない。ということもあり、ペンFの明るいファインダーのほうが使いやすい。今となっては、メーターが故障している機体が多いから、レンズに新規で識別子をつけてペンFとの互換性を損なわなかったのは良かったといえるが、ペンFT発売当時はどのような評価だったのだろうか。

 測光部はファインダー接眼部に近いが、ブラインドシェード℃ョのグリッドが接眼部からの逆入光を遮って、レンズからの光だけを測定できるように工夫されているようだ。

 レンズ

 ペンFシリーズは、企画当初からシステムカメラとして構想されており、交換レンズは豊富である。

 ハーフ判のカメラは、画像のアパーチュアが通常の35mm判の半分なので、一見小型化が可能であるような錯覚を受けるが、実際のところ、使用するフィルムじたいは共通なので、それほど小型化が図れるというものでもない。35mmフルサイズでもレンズシャッターのペンシリーズより小さいカメラはいくらでもある。

 ただし、レンズやフランジバック(要はカメラの厚み)を小さくできるのは、ハーフ判の特長だろう。

 手元にあるのは、40mmF1.4と、100mmF3.5の2本だが、自動絞りが組み込まれているのにも関わらずコンパクトなレンズである。

 ...などと書いていたら、いつのまにか25mmF4が手元に来てしまった。趣味に友達など必ずしも不要、などとうそぶいているが、やはり持つべきは友、なんだろうか(笑)。安く売りに出ている店を教えてもらった。

 (しかし、冷静な価値判断をすれば、F4と暗いレンズ、それも昔のレトロフォーカス型に2万円というのは、いかに新品同様といっても絶対的に高価だろう。古い機械が好きな人以外には理解できない世界かもしれない)

 一応これで、広角・標準・望遠のミニマムセットが完成である。昔のライツの交換レンズのように全部ポケットに収まるのは楽しい。

 作例については、ヴィンテージレンズ 作例の旅≠フページ写真箱をどうぞ。

 光学系と鏡筒内の設計について

 ペンF/FT全般に言えることなのだが、機械をぎりぎりに配置した設計のため、ミラーボックスに余裕がない。このため、レンズの古いコーティングと相俟って、迷光にはかなり弱い。特に、100mmなど望遠を使うとき、注意しなければ迷光によるカブリで画のコントラストが低下してしまう。

 40mmを使う分には、それほど逆光に弱いという感じはないのだが、100mm、25mmを野外で使う時には注意が必要である。いずれのレンズも、ハーフ判の狭いフィルムサイズの枠ぎりぎりで高画質となるように設計されており、一般的な35mmフルサイズ用レンズに比べると、実にシャープな画像を作るのだが、鏡筒の設計において迷光対策が徹底していないため、せっかくの画質が損なわれやすい。

 100mmレンズの鏡筒内を覗くと分かるが、内面反射防止を狙ったと思われる切り溝はギラギラ光るし、筒内後部はなんの反射対策も施されていない。

 アパーチュア以外の部分を覆うように角型フードを自作するか、筒内に植毛紙を貼り込む工夫がいる。

 と、いうような作業は、別に大して手間のかかることではなく、むしろ趣味の写真という観点から見れば、古い車をチューニングする行為に似て、手をかけただけ成果が得られるという楽しみにもつながる。

 そういう今日的な意味では、どうということはないのだが、これらのレンズの現役時代には、大きな問題だったはずで、開発しているレンズは自らテストしてみたという米谷さんの文章を読むにつけ疑問が残る点ではある。

 ちなみに、カメラ本体内部(ミラーボックス内)は、平滑面に艶消し塗装になっており、これも改善の余地があったのではないだろうか?可動部分に注意しながら植毛紙を貼りこめばそれなりの効果が得られるはずである。

 漏光

 60〜80年代の、「ちょっと古い」写真機は、裏蓋と本体の接合面や、ファインダースクリーンとミラーの隙間の遮光にモルトプレンと称するスポンジ状の樹脂を貼り込んでいることが多い。

 中古カメラの愛好家にはおなじみなのだが、このモルトプレンゴムのスポンジは、10年も経つと劣化してベトベトの物体に変化してしまう。

 このベトベトがスクリーンやミラーに付着して悪さをしたりと性質の悪い素材なのだが、かなり長い期間使われたもので、国産の写真機にはほとんど使用されていたはずである。

 さて、個人的な話だが、まつもとは中古カメラを入手すると、新しい遮光素材に張り替えてある場合は別として、この劣化したモルトをきれいに取り除いてしまう。実際問題として、まともに設計してある写真機ならモルトなしでもそうそう漏光しないもので、トプコンREスーパーなどはモルトなしで使用している。

 ペンFシリーズではどうか、というと、実は一箇所漏れるところがあり、それは裏蓋のヒンジ部分なのである。というわけで、市販されているモルトプレン(裏地が粘着面になっており簡単に貼り付けられる)を適宜切り分けて補修する必要がある。

 ちなみに、ペンFは、この頃のオリンパスのカメラのなかではまだましなほうで、ペンDなどは遮光材なしでは盛大に光漏れするカメラだったりする。